DAWのレイテンシ

DAWを使ったレコーディングにおけるレイテンシ問題を、外部ミキサーを使って解決することができる。レイテンシを軽減するためのポイント、外部ミキサーの使い方などについて説明する。

DAW 使ったレコーディングでの最も大きな問題はレイテンシ(音の遅延)である。オーディオI/Oに楽器やマイクを接続して、DAWで再生する音を聴きながら、リアルタイムで演奏したものモニタしたり録音したりすると、数10msずれて聴こえたり、録音されたりすることがある。
原因のひとつは、楽器やマイクの音がオーディオI/Oから入り、コンピュータで処理されて、再びオーディオI/Oからモニタに聴こえてくるまでに時間がかかることである。また、もうひとつの原因は、DAWに録音された音を再生する際、ソフトシンセやエフェクタのプラグインを使うと、コンピュータの処理に時間がかかることである。
レイテンシを減らすために、DAWを動かすコンピュータには、十分な処理能力が必要である。CPUの能力、メモリ容量、ディスク容量と速度などについて、可能な限り余裕を持たせることが大切だ。また、DAWを使っている時は、他の処理を行わないようにすることも効果がある。
しかしレイテンシを0にすることは出来ないので、レイテンシがレコーディングの障害にならないようにする工夫が必要となる。
レコーディングを行う場合、不要なプラグインをオフにすることで大幅にレイテンシを減らすことができる。コンプレッサやディレイ、アンプ・シミュレータなど、マスタリングまで不要なものは止めておこう。どうしても止められない場合は、まずエフェクタを掛けた状態の音を一旦バウンスし、単に音声ファイルを再生するだけで期待する音がモニターできるようにしてしまう方法もある。

これから録音する音のレイテンシを劇的に改善するには、DAWとオーディオI/Oを通さないモニタ回路を使う方法がある。別途オーディオ・ミキサーを用意して、楽器やマイクとオーディオI/Oの出力を接続して、これから録音する音と、DAWからの再生音をミックスする。楽器やマイクをつないだチャンネルのダイレクトアウトから録音用の音を取り出し、オーディオI/Oに接続する。
ダイレクトアウトが無い場合は、インサート端子を使うこともできる。インサート端子はステレオ標準プラグをつなぎ、tip (L ch側)から外部エフェクタに音を送り、ring (R ch側)から外部エフェクタからの音を戻せるようになっている。ステレオ標準プラグのtipとringをショートして、モノラルにするようなケーブルを使えば、インサート端子をダイレクトアウトの代わりに使える。Mackie製のミキサーは、インサート端子に標準プラグを半分差し込むことで、このような接続になる仕組みがあるので、練習スタジオでDAWを使ったレコーディングをする場合は、Mackie製のミキサーがあれが活用できる。

上位機種のオーディオI/Oでは、DSPエフェクター/ミキサーを内蔵していて、外部ミキサーを使わなくてもモニター回路を組むことができるものもある。 Pro Toolsを使い始めた時に購入したMbox 2 ProにはDSPは内蔵されていなかったが、現在の後継機種には内蔵されているようだ。現在主に使っているFast Track Ultra 8RにもDSPが内蔵されているので、小規模なバンドの録音ぐらいなら、外部ミキサーを使わずに済ませることもできる。外部ミキサーを使う場合、同時録音チャンネル数が増えると、外部ミキサーとの接続数が増え、機材のセッティングに時間がかかる。作業能率を左右するので、オーディオI/Oを選定する場合は、DSP内蔵かどうかも重要な確認ポイントとなる。

DAW のレイテンシ問題を、外部ミキサーを使って解決する方法について述べた。個人で自宅録音をする目的なら、入門機のオーディオI/Oと小さな外部ミキサーの組み合わせが最適だ。スタジオで小規模なバンドのレコーディングを行うなら、DSP内蔵の上位機種のオーディオI/Oの購入も検討するべきだろう。