家族の救急搬送に立ち会う

今年の正月明け早々に母が倒れて救急搬送された。母が救急搬送されるのはこれで二回目。前回は鼠経ヘルニアだったので、病状の進行も緩やかで、本人も自覚もあり、意識もしっかりしていた。しかし、今回は軽い脳梗塞だったので、進行が急で、本人は自覚がなく、意識も朦朧として、何より自力で立てない状況だった。恐らく倒れてから同居している私が気付くまで、30分~1時間ぐらいは経過していたものと思われる。

このような場面に出会うと、状況によっては119番に電話するべきかどうか迷うかもしれない。はたから見て、どう考えても普段と違った様子で、本人が自力でどうにもならない状況に陥っている場合や、通常の通院で診察して貰えるまで待てそうもない場合は、迷わず119番に電話するべきだ。幸い本人の意識がはっきりしている場合は、本人とよく相談して決めても良い。ただし、こまめに状況の変化がないか確認し、繰り返し救急搬送を勧めてみることも大切。私は利用したことはないが、迷ったら救急相談センター(#7119)に電話して相談する手もある。

自宅から救急車を呼ぶのは、生前の父の時と合わせて3回目だし、自家用車での搬送・入院も含めると8回ぐらい経験しているのだが、やはり何度やっても慣れるものではない。こういう時は誰でも慌ててしまうものだし、慌てると答えられて当たり前のことがすぐに口をついて出なかったりする。119番に電話すると最初に聞かれるのは、火事か救急かということ。続いて名前、住所、倒れた人の名前と生年月日、状況などを聞かれる。電話番号については、119番に電話しているこちらの電話機の番号が先方にも伝わっているようだが、後で救急隊から電話を貰う際に携帯電話に掛けて欲しい場合などは、携帯電話の番号を伝えておいた方が良い。

119番して救急車を呼んだら、次にすることは患者を出来るだけ安全な状態にすること。頭を打っている場合は下手に動かさない方がいいこともあるが、吐きそうな時は横向きに寝かせるとか、椅子に座っているとか、何かに寄っかかっている時は、それ以上落ちない状態にする程度でよい。寒そうなら毛布を掛ける、暑そうならエアコンをつけるなりする。人ひとりで人を動かすのは結構大変なので、無理する必要はない。

患者の安全を確保したら、次は出掛ける準備をする。救急搬送の際、家族がいれば誰かが救急車に同乗して病院まで行くことになる。病院でも数時間は待たされるし、病院からの帰りは自力で戻ってくる必要があるので、そのつもりで準備する。前回の搬送の時は夜遅くだったので、病院からの帰りは歩いてタクシーが拾えるところまで戻る羽目になった。財布(タクシー代)、スマホ、自宅のカギ、冬なら防寒、雨天なら傘などが重要。患者の保険証とお薬手帳なども必要になるが、これは最悪、後でも良い。どうせ入院となると保証人とか印鑑とか、いろいろ必要となり、全部この段階で準備するのは無理。

救急車が来ると住所を伝えてあっても、すぐにこちらを見つけてくれないこともある。患者を出来るだけ安全な状態にしておいて、サイレンの音が聞こえたら、表に出て手を振ったり声をかけたりして、誘導する。玄関から患者までの動線を確保し、後は救急隊の邪魔をしないように、質問に答え、依頼に対応する立場をとる。倒れてからその時までの経過を聞かれる。

搬送されることになったら、戸締りをして、救急車に同乗する。救急車は、同乗する者にとってはとても乗り心地が良いとは言えない。車酔いしやすい人は、しっかりつかまって、じっとしていること。

病院に着くと、家族はひたすら待たされる。病状の説明があるのは早くても一時間以上経ってからなので、辛抱強く待つしかない。この間に、他の家族、特に入院時に保証人になってもらう人や、入院のサポートを頼めそうな人に、連絡をしておくこと。

数時間後には、病状の説明や、今後必要なことについて説明があり、許される状態であれば患者の病室を訪ねたり、話したりできる。その後、帰宅出来るようになるので、病院の住所や電話番号、患者の病室番号、入院手続き、患者のために持ってくるものなどをメモして、帰宅する。病院を出ると、大抵の場合は、右も左もわからない状態で自宅を目指すことになるので、帰宅できる自信がない場合は病院の人に聞くこと。