米国証券会社、Morgan Stanleyの証券口座に保有していた米国株を、国内の証券会社である三菱UFJモルガンスタンレー証券の一般口座に移管した。必要なのは、対応してくれる国内証券会社を見つけることと、英語力、不屈の精神だ。
似たようなことを考える人はいると思うが、ネットで検索しても成功したという情報は以下の3つだけしか見つからなかった。
海外の証券会社にある外国株を、日本の証券会社に移管した話|てるてる
米国にある株券を日本の証券会社に移動できた、の記録 – Blog by msyk
海外資産を移す|米国証券口座の株を日本に ”移す”【後編】 ~国をまたぐ株式移管に四苦八苦~ | かえるがえる
しかもこれらの例はどちらかと言うと幸運な事例と言えるもので、これらを読んでも、私の株の移管作業について先行きは明るいとは言えなかった。しかし、成功例があるということは希望があるということだ。ここに紹介する私の経験は、いばらの道に近いような気がするが、それでもやってみようと思う人の参考になればよいと思う。
米国証券会社から国内の証券会社への株式の移管にかかわる様々な事情については、以下の記事に詳しい。この記事は相続時の話について書かれたものだが、生前に本人が行う場合でもとても参考になるので引用しておく。
海外証券口座の相続銘柄は日本の証券会社へ現物移管できる?受入可否・ACATS・税務の注意点 | 相続手続き・遺言なら行政書士法人トゥモローズ|東京・中央区
外資系の企業に勤めている人は、ストック・オプションやRSU、持株会などで、米国証券会社に米国株を持っていることがあると思う。大抵の人は値上がりしたらすぐに売ってしまうのだろうけれど、高配当株だったり、短期で売却しづらい立場にいるなどの理由で、長期保有している人もいるかもしれない。そういう人も、いつかは売却するか、国内証券会社に移管したいと思う時が来る。売却ではなく、移管を選ぶ理由としてはいくつか考えられる。
- 様々な理由ですぐに売却しづらいが、自分の死後、相続人の手間を増やしたくない。国内の証券会社に株のまま移管できれば、相続人も日本語で手続きができる。
- 長期保有したいが国外財産調書の提出対象となるのは避けたい。国内の証券会社に移管できれば、国内財産扱いとなる。
しかし、Geminiに相談してみると、まず移管は難しいのでお勧めできず、株を売却して得た資金で買いなおすのが最も良い方法だと言われた。難しいからやめておけと言われると何とかしたくなる性分なので、なんとかすることにした。
引用した記事などから、海外の証券会社からの移管を受け入れてくれる証券会社を見つけることが最初の一歩だった。残念ながら私が口座を持っていた証券会社はどれも対応できないとホームページに明記しているか、相談に乗ってくれそうな説明がなかったので、他をあたってみることにして、いろいろと調べた結果、最終的に三菱UFJモルガンスタンレー証券と、SMBC日興証券が候補に残った。移管元がMorgan Stanleyなので、まずは三菱UFJモルガンスタンレー証券に当たってみることにした。
1日目 三菱UFJモルガンスタンレー証券は、海外証券会社からの移管について、「お取引店にご相談ください」とホームページに明記している。つまり、やれないわけではないということだ。そこで、早速証券口座を開設してみる。口座開設はインターネットからできるが、その場合はMUFGテラス・コースという扱いになり、物理的な「お取引店」というものがない。多分、オンラインで問い合わせできるのだろうという期待を持って、口座を開設してみた。
8日目 口座開設後に郵送する書類などを受け取り、口座開設手続きが終わったので、早速MUFGテラスでMorgan Stanleyからの米国株の移管について問い合わせを行う。すぐに回答が来て、移管が可能かどうか調べるために以下の情報の提示を求められた。
(1)銘柄名:
(2)ティッカー:
(3)ISINコード:
(4)数量:
(5)通貨:
(6)移管元の証券会社名:
(7)移管元証券会社の所在国:
(8)移管元証券会社住所:
(9)取得経緯:
(10)当社に移管を希望される理由:
(11)転売制限等条件の有無:
ほとんどの情報はMorgan Stanleyのサイトで口座明細のレポートを出力すればわかる。ISINコードだけは載っていなかったので、銘柄名から別途検索して調べて回答した。
MUFGテラスでのやりとりは、一問一答で、質問はMUFGテラスのサイトから送るが、回答はeメールで帰ってくる。相手からの質問に答える場合は、MUFGテラスから再度質問する形を取って答える必要がある。
15日目 提示した情報を元に、一般口座であれば移管受け入れが可能である旨、回答が来た。まずは第一関門突破だ。しかし、手続きは自分で移管元に対して行う必要があるとのこと。最初に引用した事例とは違って、一気にハードルが上がった。手続きに必要な以下のような情報が送られてきた。これらの情報は移管元への手続きで利用する。
・当社英名:
・会社所在国:
・当社が利用する決済機関等(カストディ機関):別途郵送
・担当者:
・メールアドレス:
・連絡先:
18日目 MUFGテラスから郵送で追加の情報と、「外国証券の海外口座間の移管依頼書」という書式が届いた。内容について不明な点があったので、MUFGテラスで追加質問を行った。
並行して、Morgan Stanleyのオンラインでの移管手続きについて調べた。オンラインで手続きが出来れば、英語で国際電話をする必要もないのでまだ楽だ。入力項目の不明な点があったので、MUFGテラスで追加質問した。
また、移管手続きを調べる過程で、未単位株は移管できないということが分かった。米国証券会社では1株未満の少数の単位で株を売買できるが、国内証券会社では1株以上の単位しか扱えない。1株未満の株は売却して国内の銀行口座に送金することにした。
23日目 追加質問の回答が届いたので、それに従って書式に記入し、移管元の口座残高証明書と共に送付した。口座残高証明書はQuaterly statementやstatementで代用した。同時にMUFGテラスを通じて、書式が届いて、移管手続きを開始してもよい状態となったら連絡をくれるように依頼した。
30日目 MUFGテラスより移管開始してよいという回答が来た。ただし、移管元の名義にミドルネームがあり、移管先の名義と異なっている点が気になると言ってきた。私にはミドルネームはないし、Morgan Stanleyのオンラインでは訂正できない。取り合えずそのままにして、早速、Morgan Stanleyのオンラインで移管手続きを行い、MUFGテラスにもその旨連絡し、経過を見守る。Morgan Stanleyのオンラインではすぐに移管手続き中の表示となり、翌朝までには手続き完了の表示に変わり、残株数が0になった。しかし、移管先のオンラインでは株は現れない。しばらく待つことにする。
33日目 Morgan Stanleyからメールが来て、サポートに電話をするようにと言ってきた。オンラインを見ると、先日開始したはずの移管手続きの記録が、何もしなかったかのように消えていて、移管したはずの株が元に戻っている。
仕事柄英語で会話をするのには慣れているが、国際電話を掛けるのは久しぶりで、国際電話の掛け方を調べるところから始める必要があった。幸い、私が契約しているドコモの回線ではワールドコールというサービスがあり、オンラインで申し込みできる。調べてみるとすでに申し込み済みだった。掛け方も簡単で、010もしくは '+' (0の長押し)のあと、国番号、相手先電話番号を入力すればよい。電話料金も米国にかける夜間なら30秒31円で、昔のように百円玉が飛んでいくような感じではない。
サポートに国際電話をしてみると、自動音声応答でSocial Security NumberかGlobal IDを入力するように指示され、入力すると、誕生日を入力するように指示され、入力すると、しばらく待たされてやっと担当者につながる。かなり早口の英語で今日はどういう用事かと聞かれるので、事情を説明したところ、やはり名義に余計なミドルネームがあることが問題なのかもしれないということで、ミドルネームを削除する手続きを行うことになった。必要な書式をPDFで送るので、記入して専用のツールで返送するように指示された。
38日目 Morgan Stanleyから名義変更の書式がPDFで送られてきた。変更内容を記入してPDF化し、パスポートのコピーと共に返送する。
43日目 Morgan Stanleyから再度連絡があり、サポートに電話するように指示される。再度電話し、Global IDと誕生日を入力し、担当者が出るのを待つ。担当者が出ると、また今日は何の用事だと聞くので、事情を説明したところ、送った書式の処理状況を調べてくれた。その結果、内容に不備があるというので、詳しく聞いてみると、正しい記入方法を教えてくれた。というか、詳しく説明されないと分からないような記入方法だった。ともかく、正しい記入方法で再度書式を送付し、対応を待つ。
44日目 Morgan Stanleyから電話があり、さっき送った書式で内容は問題ないが、恒久的な変更は出来ないと言われた。曰く、この口座は個人のものではなく、私の勤務先の会社のものなので、勤務先の会社の担当者から変更依頼を行う必要があるとのこと。担当者って誰? と聞いてみたがこちらではわからないとのこと。うーん。
仕方がないので、勤務先の社内のシステムでMorgan Stanleyの口座を管理している担当者を探してみる。いくつか関連する情報を見つけ、あてになりそうなところにメールしてみるが、別の担当窓口を紹介される。紹介された窓口からは応答がない。
改めて、別の方法で探してみると、社内のAIチャットボットに聞く方法があることがわかった。早速AIチャットボットに聞いてみると、それは自分でMorgan Stanleyのサポートに依頼すればよい、という。それはもうやってみたが、会社の担当者からの依頼でないと変更できないと言われたと言い返すと、じゃあチケット (依頼票)を起票しろ、というので、どうやって起票するのかと聞き返すと、このガイドを参照しろとリンクを送ってきた。リンク先を見ると、AIチャットボットに簡単なコマンドを送ればよいだけだった。なんだかなあと思いつつ、チケットを起票して反応を待つ。
翌日、今度は人間の担当者から対応中と連絡が来て、一週間ぐらいで名義が変更され、余分なミドルネームが削除された。
53日目 社内手続きで一週間以上も使ってしまったが、気を取り直して再度Morgan Stanleyのオンラインで移管手続きを開始し、MUFGテラスにも経過報告をして、状況を見守る。しかし、前回同様、数日で何もなかったことになって、Morgan Stanleyから呼び出しがかかる。
59日目 サポートに電話してもどうにもならないと思ったので、別の方法を探してみる。Morgan Stanleyのオンラインの中を探してみると、PDFの書式がいろいろと用意されていて、その中に株式移管 (Share Transfer)の書式がいくつかあった。タイトルから米国・カナダ以外向けのものらしきものを選んでダウンロードし、必要な項目を記入して、サポートに送った。少し待ってからサポートに電話してみた。担当者に事情を話すと、早速送った書式を見てくれて、修正が必要な個所を教えてくれた。修正して送り直し、再度電話すると、内容は問題ないということだった。詳細な確認が終わったら再度電話で本人の最終的な意思確認を行うので、連絡を待てと言われた。
61日目 意外にすぐMorgan Stanleyから連絡が来て、サポートに電話をすると、内容に問題はないので、本人の最終的な意思確認をしたいと言う。移管の意向を改めて伝えると、処理完了には5~10日ほどかかるので、しばらく待てと言われる。
73日目 最終確認から12日後、そろそろまたサポートに電話して状況を聞いて見ようかと思い始めたころに、やっとMorgan Stanleyのオンラインで移管処理開始の状況となった。
74日目 Morgan Stanleyのオンラインで移管処理完了の状況となり、残株数が0になった。その数時間後にMUFGテラスから電話があり、移管完了した旨、連絡があった。
結局、二度目のオンライン手続きが失敗したのは、Morgan Stanleyのオンライン移管手続きが、米国・カナダ以外への移管に対応していなかったからと思われる。PDF書式による手続きも不完全だったが、Morgan Stanleyのサポートによる補足で、対応することができた。
米国証券会社から国内証券会社への移管では、移管元に、(1)カストディ機関のDTCコード、(2)移管先のカストディ機関での口座番号、(3)移管先の私の口座番号を伝える必要があるのだが、Morgan Stanleyのオンライン移管手続きでは(3)を入力する項目がなく、PDF書式では(1)と(2)を記載する項目がない。サポートによると、PDF書式では(3)を記載する項目に、(1)、(2)、(3)を'/'で区切って指定すれば良いということだった。
こうして試行錯誤の履歴を振り返ってみると、ミドルネームの問題がなく、最初から書式での手続きを選んでいれば、約一ヶ月は短縮できた可能性がある。その場合でも移管完了まで45日程度はかかっていたことになるので、やはり時間のかかる作業であることには変わりはない。
米国証券会社から国内証券会社への米国株の移管は難しいが、やって出来なくはない。売却より移管を選ぶ強い理由があり、英語力と不屈の精神がある方は、ぜひ挑戦して成功例を増やしてほしい。

















